経済的な理由で生理用品を購入できない女性がいるという「生理の貧困」。
 女性の健康や尊厳に関わる重要な課題となっています。
 生理の貧困への対応として、 地方公共団体等による生理用品の提供や相談支援などが進められていますが、生理の貧困にある女性の心身の健康状態、社会生活への影響などについては、あまり把握されていません
 こうした状況を踏まえ、令和4年3月23日に厚生労働省が発表した「生理の貧困が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」をもとに、現在の日本国内における「生理の貧困」を見ていきましょう。

「厚生労働省ホームページ」(https://www.mhlw.go.jp/

Point

1.生理用品の購入・入手に苦労している人
2.購入・入手できないときの対処法
3.身体的な健康状態
4.精神的な健康状態
5.公的支援制度の認知・利用状況

1.生理用品の購入・入手に苦労している人

 生理用品を購入出来ない。それはどのような方たちなのでしょう。

 「新型コロナウイルス感染症発生後(2020年2月頃以降)から現在(2022年3月)までの間に生理用品の購入・ 入手に苦労したこと」について、回答者全体では、「一度もない」が最も高く、71.5%となっていますが、「よくある」「ときどきある」を合計した割合は8.1%(244 人)となっています。

 年代別にみると、18・19 歳、20代以下で「ある」の割合が他の年代より高く、経済的にまだ自立が難しい年代の方に多くみられます

 世帯収入別(下図)にみると、
「100 万円未満」
「収入なし」
「100 万円~300 万円未満」
の順に「ある」の割合が高くなっています。

 生理用品の購入に苦労したことが「ある」と回答した244人に、その理由を尋ねたところ、
「収入が少ないから」
「使えるお金が少ないから 」
「その他のことにお金を使わなければならないから」
等の経済的な理由が多く挙げられています。

 ですが、生理の貧困は経済的な理由だけなのでしょうか?

・ネグレクトや虐待

・父子家庭で生理用品が用意されず、必要だとも言い出せない環境

・性教育の不足、知識不足

これらの原因が若年層の生理の貧困割合を高める理由でもあるのかも知れません。

【NHK】「見捨てられるのが怖い」10歳で生理の貧困になった私

2.購入・入手できないときの対処法

 入手出来ないからといって、そのまま放置しておくことは出来ません。
 対処法として「トイレットペーパーやティッシュペーパー等で代用する」が 43.0%「タオルやガーゼ等の布で代用する」が 24.6%と、身近にある物で代用される方が多いようです。

 交換する頻度を減らしたり、トイレットペーパー等で代用するといった、不衛生と考えられる対処法を1種類以上行っている人は151人で、生理用品の購入・入手に苦労したことがある人の61.9%にのぼります。

 それ以外の方法では、家族や同居者、友達などに「生理用品をゆずってもらう」を3割から4割程度の方が選択しています。
 現在は生理用ナプキンの無料配布が至る所で実施されており、それを利用している方も多いのでは?と思う方もいらっしゃると思います。

 しかし、「民間団体や行政、学校等で無償配布されている生理用品を使用する」に回答された方の統計を見てみると、
「あまりない」 22.5%
「一度もない」 52.9%
「よくある」 5.7%
となっています。

生理用品の入手にお困りでありながら、半数以上の方が無料配布の制度を利用しないというはどういう事なのでしょうか。

3.身体的な健康状態

 では、生理用品を購入・入手できないとき、身体にはどの様な症状が表れるのでしょう。

 かぶれかゆみ、外陰部の発赤悪臭など、約8割の方に何かしらの症状があらわれています。

 これは前述の「生理用品の交換頻度を減らす」や「別の物で代用する」などが主な原因として考えられます。

 「同じナプキンであっても天然素材の少し高価なナプキンじゃないと肌がかぶれてしまう」といった体質の方は、無料配布されている安価な生理用品を使用する場合、この様な身体的症状を我慢せざるを得ないのです。

4.精神的な健康状態

 精神的な健康状態について、うつ病・不安障害などのスクリーニングに用いる尺度である「K6」を用いて測定した結果を見てみましょう。
 合計得点が高いほど精神的な不調が深刻な可能性があるとされています。

 K6得点の平均値は、回答者全体では6.9点、生理用品の購入・入手に苦労したことが「よくある」「ときどきある」と回答した人は13.1点、「あまりない」「一度もない」と回答した人は6.4点。

 生理用品の購入・入手に苦労した経験が「ある」人の得点が「ない」人の得点を大きく上回っています

 交換頻度を減らしたり、トイレットペーパーで代用したりする行為は、不快感や惨めさなどの精神的苦痛の原因でもあります。

5.公的支援制度の認知・利用状況

 最後に、生理用品の無償提供がどれだけの方に認知され利用されているのかを見てみましょう。

 「あなたのお住まいの地域で、生理用品の無償提供が行われていること自体を知っていたら『行われている』をお選びください」とお聞きしたところ、「行われている」と答えたのは7.1%

 生理用品の入手にお困りでありながら、49.6%の方は制度があるかが「分からない」と答えています。

 地域で生理用品の無償提供が「行われている」と認知している人214人に、制度を利用したことがあるかどうかを尋ねたところ、「利用したことがある」は17.8%
 利用したことがあると回答した38人に利用した実施主体を尋ねたところ、「市区町村(63.2%)」「学校(15.8%)」 「地域の民間団体(企業・NPO など)(15.8%)」などが挙げられました。

 市区町村からの生理用品の無償提供が「行われている」と認知しており、かつ「利用したことがない」と回答した人(129人)について、その理由を尋ねたところ、

「自分が提供される対象に含まれなかったから」
「申し出るのが恥ずかしか ったから」
「人の目が気になるから」
「対面での受け取りが必要だったから」


などが挙げられました。